- 5月18日、「株式会社名古屋教育ソリューションズ」「株式会社デジタル・ナレッジ」が主催する「iPadを教育にどう使う?」というセミナーに参加する機会を頂きました。
- 今回のセミナーは主催者である「株式会社名古屋教育ソリューションズ」「株式会社デジタル・ナレッジ」に加え、「株式会社ボーンデジタル」「株式会社ワークスコーポレーション」の計4社が運営する「電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会」の研究結果の一部として「iPad」が「教育分野」においてどのように活躍しているのか?実際にどのように取り入れられ、どんな活用方法があるのか等、現在も教育分野で活躍される方々の講義を通して「新しい教育の形」を見ることができる大変面白い内容でした。

- 今や「iPad」は電子書籍を読む為のツールだけでなく、汎用コンピュータとしての機能を持ちながら誰でも手軽に利用できる点などが高く評価されています。様々な場面での活用が注目され、企業や機関が積極的に導入を検討しています。
「教育分野」でも注目度は高いものの、導入している教育機関はまだまだ少なく、また、導入事例も「一度だけの導入」であったり、なかなか継続して「iPad」を導入している教育機関が少ないのが現状です。
「電書のすゝめ」では、このセミナーを通して教育分野でデジタル教科書として活躍するタブレット端末「iPad」の現状と、これからの活躍を知ると同時に、教育分野における「iPad」の未来の可能性を一人でも多くのみなさんにお伝えできればと思い、今回特集いたしました。
- ※「電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会」とは
- 教育機関での「iPad」などのタブレット端末や電子書籍を『デジタル教材』として活用することで得られる効果と課題、解決策などの情報共有を行いながら、電子書籍を活用した教育スタイルを創造するための研究を行い、活動している研究会です。
- 最新教育ITタブレット端末・eラーニング・システム連携
~タブレット端末が切り開く、新教育システムとは~ - 講師:株式会社デジタル・ナレッジ 代表取締役 はが弘明氏
- 株式会社デジタル・ナレッジとは1995年に設立された、教育機関と受講者との間の掛け橋としてビジネス展開をしているeラーニング専業会社です。
- 【教育分野へのiPad導入に対する意識調査】
- 同社が実施する、一般の人に対する意識調査ではデジタル教科書への興味関心は大変高く、教員に対する意識調査に関しても「iPad」の教育現場での導入についてどのようにお考えですか?という質問に対して、

- と導入を視野に入れている人が67.0%もいる事が分かります。
- また、導入に賛成できない理由はなんですか?という質問に対しては
- • 教育現場でのiPad利用シーンがイメージできない:39.4%
- • コストがかかる:27.3%
- • 紛失や破損等管理が不安:24.2%
- • 個人情報の漏えい等のセキュリティ面での不安:6.1%
- • 出会い系サイトなど不適切な情報閲覧が不安:3.0%
- と、導入したくない教員の最大原因は利用イメージの欠如にあるという報告があります。
これらの結果からも分かるように、「iPad」を教育分野に導入することに期待を持っている半面、教員自身が利用したことがない為にイメージが沸かないという傾向にあります。 - 【シームレスを実現できるiPad】
- 同社は、今後タブレット端末は、「シームレス」であることが求められ、「シームレス」な展開を見せていくと予想しています。
ここでの「シームレス」とはユーザーが同一の端末を違和感なく「現場や学校などの学習環境」「外出先や車内などの場所」「過去や未来などの時間」に限定されずに連続利用できる事を意味しています。
ここでしか使えない端末、ここで使用した教材は自宅では見ることができないといった状態では、ユーザーにとって快適で満足な学習環境が整っているとは言えません。
教室では電子書籍を、自宅や職場ではeラーニングを利用するといった使い分けと、いつでもどこでも連続利用ができる事が理想と言えます。
つまり、タブレット端末とはeラーニングのできる単なる新種の端末というだけではなく、「シームレス」の実現を可能にするという本質的な意味をもった端末といえます。 - また、デジタル教科書である為には 電子書籍+eラーニング学習環境(「Input」と「Output」「Manager」の機能)を充たす物であることが求められます。
- 【「iPad」導入への課題とは】
- ただし、先の意識調査にもあるように「iPad」導入への課題は数多くあります。
- • デジタル教科書の配布を確実に行わないと授業がスムーズに実施できない。
- • 操作上、ハードウェアを利用する際に「トラブル」が起こりえる。
- • 個人に配布する場合など、有害サイト、ウィルス等に対するセキュリティ対策を配布する教育機関側で実施することが必要。
- • デジタル教科書作成において出版の流れの変化。
- 同研究会ではこれらの課題が見えてきたことをまず一歩として捉えており、克服することにより教育の良いツールとなってほしいという思いで活動しています。
- オフライン学習で始まる新しいeラーニング
- 講師:株式会社名古屋教育ソリューションズ 専務取締役 山口宗芳氏
- 株式会社名古屋教育ソリューションズは2009年8月に設立され、eラーニングシステムおよび関連製品の販売、個別ニーズにあわせたアプリ開発、また製品開発だけではなく教育現場での効果的な活用方法、運用方法も提供している企業です。
- 【インターネット接続が必須の「eラーニング」をiPadで実施する為には】
- 「eラーニング」のメリットとはいつでも、どこでも学習できるという点であり、インターネットに繋がっている事が前提条件となっています。
しかし、インターネットに頼るという事はリスクもあります。 - 例えば、回線の質や速度によってはスムーズに学習できない可能性があります。また、ネット接続設備未成熟エリアや法令的、技術的要素から設置出来ない工場、建築現場、研究所、医療現場などのエリアには設置できない事、また、自然災害による設備倒壊があった場合にも学習が中断される恐れがあります。
インターネットに接続できないと、途端に利用が困難になったり、利用者も限定されてしまいます。
しかし、このリスクは「iPad」のメリットでカバー出来るのです。 「iPad」でe‐ラーニングを行うメリットとは、起動が早く、ロングライフバッテリーであること、そして、ネット接続で動くWEBブラウザとローカルでも動くアプリケーションの存在などが挙げられます。
このアプリケーションの存在によって、インターネット接続の不安を回避し、「いつでもどこでもできる」事を実現できるのです。 - 【オフライン環境でeラーニング学習及び学習データの保存・同期を実現したアプリケーションの登場】
- 今回はこれらの課題を検討した上で、同社が株式会社デジタル・ナレッジの協力のもと開発したオフライン学習アプリ「Knowledge Deliver オフライン for iPad」の紹介がありました。
「Knowledge Deliverオフライン for iPad」は、デジタル・ナレッジが提供するeラーニングシステム「knowledge Deliver」で作成したeラーニング教材を予めダウンロードしておくことによって、ユーザーはオフラインでも「iPad」で学習することができます。 
- また、学習履歴データをオンライン環境元でLMSと同期することも可能であり、受講生の進捗状況やテストで何点取ったかなどを確認することができます。
さらに、テキスト文書やプレゼンテーションなどを取り込んだテキスト教材をはじめテスト教材として択一、複数選択、完全一致、記述などの出題形式での問題も簡単に作成が可能です。
また、テスト結果は分野毎にレーダーチャートで表示されるため、教える側の授業内容の見直しや、学ぶ側も自分の苦手箇所を把握することも可能です。 - このように、eラーニングはオフラインでも可能であり、今後は「iPad」のオフライン学習が新しい学習スタイルとして確立していく事が予想されます。
「iPad」を利用した、「新しい教育の形」を実現するためには、教員が教育の中で「iPad」をどのように利用していくかというイメージを持つことが大切だと考え、まずは教員が「iPad」を利用することが大切です。 - 「Knowledge Deliverオフライン for iPad」
- URL:http://nagoya-es.com/news/kd-offline/
- タブレット端末を活用した、スクールにおける実証実験のご報告
- 講師:株式会社デジタル・ナレッジ ビジネス開発プロジェクトリーダ 服部大介氏
- 【「iPad」導入した結果とは?】
- 本講義は実際に「iPad」を授業で使った結果と考察についてのご紹介でした。
- 2011年4月16~17日の間で検証を行った結果、「iPad」を導入したクラスは、「iPad」を導入していないクラスと比較すると、
- • 予習・復習に費やした時間が長かった(ほぼ全員が予習・復習を行っており、予習に関しては2倍の効果があった)
- • 授業の理解度 、テキストへの満足度が高かった
- • 半数以上が、電子書籍(電子教科書)に興味があった
- と、「iPad」は学習の場所を選ばない為にメリットを得ることができたようですが、「やはり紙が良い」「見にくい」「全て電子化したテキストが欲しかった」という要望も中にはあったそうです。
ただ、これだけの満足度や実績は無視できない結果と言えます。 - 【「iPad」導入する前の準備とは?】
- また、iPad導入に対し
- ① 端末の準備
- ② 無線LANなどの設備の準備
- ③ 受講生の学習環境の準備
- また、今後は教材自体が学習管理のプラットフォームとなることも予想されており、今後ますます多くの企業が「電子化」した書籍(電子書籍)を「iPad」で活用しようとしています。
- 「iPad」を用いて行う語学教育のカタチ
- 講師:愛知学院大学 教養部 教授 佐々木真氏
- 【「iPad」導入した結果とは?】
- 佐々木教授は実際に大学の講義で「iPad/iPhone」「iPod Touch」を利用している方であり、「iPad」の利点、授業で導入することのメリット、教員はいかようにして「iPad」を利用していく事が良いとされるのか等、大変面白く、分かりやすい講義を展開して下さいました。
「iPad」は単にPCの代わりではなく、学生や教員を、果ては教育そのものを変えるものであると主張されていました。 - 【「iPad」を導入するにあたっての2つの利点とは?】
- ① 双方向性
- ② 起動性と機動性
- ① 「iPad」の存在による双方向性とは
- • 学習者とプログラム(interpersonal)
- • 自分の中で自分とのやりとりが可能(feedback)
- • 教員と学習者 (feedback)
- において、「iPad」のデータ(taskに対する解答、出席、成績データ等)を同一空間、同一時間でそれぞれがデータを共有することによって、フィードバックなどの直接的な指導が可能であること。
- ② 「iPad」の起動性と機動性とは
- • 瞬時の起動
- • 起動時のトラブルから解放
- • ディスクレス
- • バッテリーの持続性
- • 携帯のしやすさ
- など、起動に時間が掛かる「PC」とは違い、すぐに利用することができる、持ち運び可能であることなどのメリットを生かした、起動性と機動性。また、「iPad」の省電力による節電効果もみられる。
データの複製を別の場所にリアルタイムに保存することもできます。(ミラーリング)
- 【「iPad」導入において教員のメリットとは?】
- 「iPad」は、学生だけでなく教員にも利用するメリットがあります。学生には学習ツールとして、教員には教育・管理ツールとして利用できます。
教員は教卓の前にいる必要がなくなります。「iPad」を教室のスクリーンに接続し、遠隔操作で教材(コンテンツ)を映し出す、Bluetoothで音声を聞かせる等が可能です。
その結果、教室内を巡回することができますので、学生とのコミュニケーションやサボり等の防止にもつながります。
また、「iPad」で各学生の情報を管理することで、各学生の進捗状況によって指導する内容、提供する教材の内容を変えることもできます。 教材管理も一元化が可能であり、教員の業務を削減できることができます。 - 【「iPad」導入に対する教員の抵抗とは?導入後の教員の役割とは?】
- このように教員に対するメリットが多いはずなのになぜ、抵抗する教員が多いのでしょうか?
「iPad」の存在により、学生が自身でも学習を進めていくことが可能となる為、教員の存在がいらなくなってしまうのでは?と不安を感じている教員が少なくないようです。
しかし、日本はまだまだ先生に教えを請う文化が定着している為、「iPad」を導入することはより一層、教員の能力が必要とされるのです。 - 教員はCreatorになる
電子書籍(epub)、WEBコンテンツの制作者となる - 教員はAnalystになる
学生からの回答チェック解答分析を行い、授業に反映させていく - 教員はNavigatorになる
明示的説明、質問への回答指導、個別に学生の状況を把握できる
- 教員はCreatorになる
- このように、コンテンツを制作できる教員、様々な角度から自分の授業内容や学生の理解度などを確認しながら授業に反映できる教員、個々にフィードバックを行い個別に生徒と向き合える教員である事が期待されます。
とくに、コンテンツ制作に関しては真の電子教科書はまだまだ存在していないので、コンテン制作のできる教員が今後求められていくと予想されます。
また今後は「ノマド化」=個別ペースでの学習を可能とすることも求められます。 - コンテンツ制作に対する抵抗を感じる方が大半かと思われますが「iPad」で使用する教材は動画やテキストなど簡単に作成することも可能です。
「iPad」の導入はクラウド経由でテキストを配信することや、個別に質問や解答などを実施することができるなど、様々な形での新しい授業を展開していく事が可能です。
端末の導入コストを考えると、「iPad」の学校単位での導入はなかなか踏み切れませんが、教員自身が利用するだけでも授業に変化があると説明されていました。
- まとめ・・・
- 教科書に直接書き込みたいけど上手く書きこめない、ノートとして使えるのか、デジタル教科書を作成できる人の育成など、課題が多く、そして準備にかかるコストが導入の足枷になっており、今もなお「iPad」を導入に対する費用耐効果は検証されていない現状を知る事ができました。
また、教育機関で実際に利用して便利だと感じている方がいる事、意識調査では導入することで良い結果が立証されていることも本セミナーを通して知ることができました。 -
導入するためにはまず、教員自身が利用してみることが大切であると同時に、効果的な利用方法を教員同士で情報共有できる場が必要な気が致します。そうすることも教員が導入へと踏み出す第一歩となるのではないでしょうか。
愛知学院大学 佐々木真教授が言った「iPad」は、あくまで教員と学生のコミュニケーション媒介ツールであり、万能ツールではない、そこに人が必ず必要とされるという言葉が大変耳に残っております。 - 「iPad」というツールが授業に新しい形の授業を生み出す為には「授業をよりよくしていこう」といった教員の意思が必要不可欠であり、本セミナーの講師の方々にはその熱意が大変に感じられました。
自分の授業が学生にとって有効的であるのか客観的に見ることは大変素晴らしく、日々よりよい授業を追い求める事ができると思います。
また、デジタル教科書やコンテンツ制作を教員自らが行う事によってオリジナルの授業が展開でき、教員が今までの培ってきた知識だけでなく、ノウハウまでもコンテンツに入れる事によって魅力あふれる授業が展開されていくのだろうと感じました。 今後も、教育分野において電子書籍やデジタル教科書がどのような影響をもたらしていくのか注目していきたい。




